不機嫌なカレと秘密なつながり
 バスケの練習を終えた彰太が、ジャージ姿でこちらに向かって歩いてくるのが見えた。

「彰太……」
 先に終わったなら、教室で待っててって話したのに。

 真面目に平日の部活に参加したら、金曜日から土曜日まで一緒に過ごす……というルールは今も続行中で。

 サッカー部の中でも、そのルールはみんなが知っている。
 彰太の姿をとらえると、みんなが「帰っていい」と声をかけにくる。

「姫歌、帰るぞ」とフェンス越しに、彰太が口を開いた。

「教室で待っててって言ったはず」
「待てないから、きた」
「だろうね」とあたしは、ぷいっと彰太に背を向けた。

「おい!」
「だから、部活中!! 彰太が来ると、終わってないのに、帰れって言われるの」
「いいことだろ。遠慮なく帰ろう」
「そこは、遠慮して」とあたしは振り返って、彰太をにらんだ。

 フェンス越しに彰太の前に立つ。
 彰太はあたしの手に指を絡めると、「待てないんだ」と小さい声で呟いた。

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