夢見るキスと、恋するペダル
店の奥には小さなソファもあった。
いろんな工具や部品がある中、革張りの渋いソファ。
おしゃれな趣味だなぁと思いながら、座らせてもらった。

パイナップルジュースの甘酸っぱい味……と、目の前で腰に手を当てて缶コーヒーを飲む男性。
言葉はないままに、流れる空気は穏やかで、落ち着いた。

この人が出す空気感は、好きかもしれない。
昨日は怖かったけど、いい人だとわかったし……。

泣いてしまったのは、この人の言葉のせいじゃない。
それだけは、わかる。

「あの、全然気にしないでください。私、たぶんいろいろ溜まってて、それが出ちゃっただけなんで…。あの、お金は払いますから」

「……うん」

飲み干した缶コーヒーを、ゴミ箱に軽く投げ入れる。

「泣いたら、ちょっとすっきりして……ありがとうございました」

「そう。俺は罪悪感でいっぱい……」

「ごっ、ごめんなさいっ」

「ウソだよ。元気出して」


とん、と背中を押されて、心に温かい感情が広がる。

さっきも思った。
この人の手は、すごく安心できる。
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