夢見るキスと、恋するペダル
「彩葉ちゃんは……やっぱりビッチなの?」

と言われて、ぱちりと瞳を開ける。

ほんとだ……私、ビッチじゃん!

「違うんだけど、違うけど、なんか、無意識に……!」

引き寄せられちゃうの。
航さんの黒い瞳に。逞しい腕に。男らしいこの匂いに。

ああ、でも私はまぎれもないビッチ行為を働いた……!
クソビッチじゃん!


すると……
私の頭を大きな手が包み、再び航さんの胸の中へ引き寄せられた。


「……よしよし。寂しいんだな」

低い声が耳をくすぐり、甘くジンと響く。
ペットを撫でてるみたいな慈しみを感じる。
こんなに優しく撫でてもらえるなら、いろはちゃんの代わりになりたい。

いつの間にか両手は航さんの背中に回り、航さんを押し倒すような体勢になっていた。

息が、かかるんだけど……。


「抱きしめるだけ、な?」

下からぎゅっと抱きしめられて、さらに密着して。
衣擦れの音に、トクトクと鼓動を打つ。

この狭い空間で、男の人に発情している自分が信じられない。

あったかい。

ただ、こうしていると、体に血が通って、私も生きていると思える。

航さんの温もりは、私を溶かしてくれた。
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