夢見るキスと、恋するペダル
フェロモンって、こんなのかな。この香りで、発情して……。

航さんの手が、私の両手を仰向けにさせる。
指が絡み、草の先が膝をくすぐるので内腿を摺り合わせながらしゃがむ。

「膝も血ー出てんじゃん…」

「あ、ほんとだね…痛そう」

「なんで人ごとなんだよ。…とりあえず洗うか」

近くにある公園。水道があることを知っていた航さんに連れられて、両手のひらと膝を擦りむいた情けない姿で歩く。
男の人の右手と、私の左手の指は、絡んだまま……。腕も触れ合って、自分の中から湧きあがる不思議な感情に、戸惑っていた。

「消毒しなくても水道水でいいらしい」

「へー。航さん博識」

苦笑している、少し下げた眉とか。怖いのに、笑ったらちょっと目がなくなるとことか。
整ってるのか、無精なのか、わからないひげとか。顎のラインとか……。

そうやって、ときどきまっすぐ、私の目を見るとことか。
それにいちいち、胸が苦しくなっている私の気持ちは、知らないんだろうな。
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