夢見るキスと、恋するペダル
私には、ひとりも友達がいない。
高校入学してまもなく、ある事がきっかけで、少ない友達も離れて行った。
最初は、中学ならまだしも、高校生になって子供じみた嫌がらせをする人間がいたことに驚いたし、その標的になった自分の存在って一体何なんだろうと考えたりした。
ことごとく排除され続けて、今私は、空気になった。
私の存在は、みんなには見えない、空気のようなもの。
「学校戻ってみようかな…」
赤い自転車に跨り、さっき押して帰ってきた道を漕ぎ出した。
商店街を抜けたら、ちょうど夕陽に向かう方角に高校はある。
まぶしさに目を細め、ひたすらに漕いで戻る。
自転車は、生まれ変わったようだった。ペダルはスムーズに漕げるし、キィキィ音もしない。
少し手を入れてくれただけでこれだけ変わるのかと思うと、あの自転車屋さんを少し尊敬した。
一度去ったはずのグラウンドを横切っていると、クラスメイトである陸上部の原田が私に向かって手を振ってくるのが見えた。
原田こそが私が人間から空気になったきっかけの人物だ。
私は少し立ち止まりかけたが、もう目線を合わせることはなく、校舎に戻った。
高校入学してまもなく、ある事がきっかけで、少ない友達も離れて行った。
最初は、中学ならまだしも、高校生になって子供じみた嫌がらせをする人間がいたことに驚いたし、その標的になった自分の存在って一体何なんだろうと考えたりした。
ことごとく排除され続けて、今私は、空気になった。
私の存在は、みんなには見えない、空気のようなもの。
「学校戻ってみようかな…」
赤い自転車に跨り、さっき押して帰ってきた道を漕ぎ出した。
商店街を抜けたら、ちょうど夕陽に向かう方角に高校はある。
まぶしさに目を細め、ひたすらに漕いで戻る。
自転車は、生まれ変わったようだった。ペダルはスムーズに漕げるし、キィキィ音もしない。
少し手を入れてくれただけでこれだけ変わるのかと思うと、あの自転車屋さんを少し尊敬した。
一度去ったはずのグラウンドを横切っていると、クラスメイトである陸上部の原田が私に向かって手を振ってくるのが見えた。
原田こそが私が人間から空気になったきっかけの人物だ。
私は少し立ち止まりかけたが、もう目線を合わせることはなく、校舎に戻った。