キラキラしている人がいる
「そんなにあんドーナツ好きなのか?」
「いや、別に…」
横取りしようとした奴が会話を続けてくる。
走り幅跳びの土井。確かクラスは1組。
人懐こそうな顔としなやかで長い手足。
長時間の屋外での練習のせいか、6月だというのにすでに肌は浅黒く焼けていた。
「じゃあなんでそんなに必死?」
「…なんででもいいだろ。」
「まぁ別にいいんだけどね。なんか中田がそんな反応するのって新鮮。面白い。」
「は?人で面白がるな。」
「だって中田っていっつも仏頂面ってか、おっかない顔してるじゃん?
あんな必死にあんドーナツを守る中田なんて誰も想像できねぇよ。」
「…うるせぇ。黙れ。」
「あ、もしかして今度は照れた?
やっべー今日これから槍でも降るのかな。」
小林と同じようなこと言いやがって。
俺に対して失礼だぞお前ら。
あんドーナツをカバンにしまって、うるさい土井の頭を一発殴って、黙って部室を出た。