キラキラしている人がいる
6月に入ってまた日が長くなったのか、日が完全に落ちるのはまだ少し先のようだ。
駐輪場へ足を進めると、昼に次々と押し倒された自転車たちは、もう数えるほどしか残っていなかった。
あの惨劇を引き起こした馬鹿の自転車も見当たらない。
「なっかったー。途中まで一緒に帰んね?」
「…断る。」
殴られたというのにまだめげない土井。
今日はなんだか面倒くさい馬鹿によく絡まれる日だ。
勘弁願いたい。
「そんなつれないこと言うなよー。お前、帰る方向右、左、正面どれ?」
「左。」
「お、じゃあオレも今日は左から帰ろうっと。」
…本当に勘弁願いたい。
「あんドーナツ結局食ってなかったけど、なんで食わねーの?」
「別になんだっていいだろ。俺に構うな。」
「えーなんでよ。今まで同じ部活で汗水たらしてきた仲じゃないのー。」
「うざい。」
うざいという言葉はこういう時に使うのが正しい使い方なんだなとしみじみ実感した。
ひっでーとカラカラ笑う土井。
今まで部活でも愛想が悪かった俺に、なぜこうも話かけてくるのか。
小林といい土井といい、人の話を聞かな過ぎて困る。
「なぁ、やっぱあのあんドーナツ食わないなら…」
「家に帰ってから食うんだよ!黙ってさっさと帰れ馬鹿。」