キラキラしている人がいる
「中田先輩、部活行きましょうよ。」
その一言で現実に引き戻された気がした。
と、同時にいつの間にか忘れ去っていたいらだちが復活した。
なんだ、この後輩は俺をいらだたせる天才か。
「おっと、また足止めしちゃってたね。ごめんよ、わざとじゃないんだよ?ただねえ、おしゃべりおばさんなのよあたし。」
おっほっほーとよくわからない笑い声をあげて、「おばさんは退散するわねー」と言って、背を向けて行ってしまった。
背を見せる一瞬、瞳の輝きが消えるのが見えた。
また消してしまった。
せっかくきれいだったのに。
「小林っ…」
「ん?なーに?」
小林の背中に思わず話しかけてしまった。
もう部活に行かなければいけないのに。
「…あーっと、明日、俺の分も。」
「何が?」
「限定パン。」
「ふはっ めっちゃ気になってんじゃん。りょーかい!」
「あ、あと、」
「何よ?」
「…チャリ倒すなよ。」
「ふふ 心配どうもありがとー。倒したら中田氏のこと呼びにくるわねー」
振り返った小林は笑顔を見せてそう答えると、そのまま帰っていった。
明日の約束。
当たり前のように交わされたそれが、なんだかとてもくすぐったくて無意識に顔が緩んだ。