キラキラしている人がいる
「無理してんな。交換。」
教室に取り残された世界地図を抱えて小林の横に並んで歩く。
ノートとワークを取り上げて、比較的軽い世界地図を渡すと、目をまん丸にして驚く小林。
「中田様!」
「うるせぇ馬鹿。」
「え、でもあたしが運ばなきゃ…」
「別に一人で運べなんて言われてなかったろ。つか、今更戻ったら俺が恥かくから手伝わせろ。」
「……ありがとう!!優しい!嬉しい!」
パッと星が流れるかのように、輝きがあふれる。
「どういたしまして。」
その輝きが見れるのならば、いくらでも。
「中田は見かけによらず優しいね。」
「小林は見た目通り馬鹿だな。」
それはひどいな。と言いながらもニコニコと話す小林。
「助かるよ。本当にありがとう。」
何度目の感謝の言葉か。
小林はどんなに些細なことでも、誰に対しても感謝の言葉を忘れない。
「そんなに言わなくていい。大したことじゃない。」
「あたしにとったら大したことだよ。それに、あたしがありがとうって思った時にしか言ってないよ。」
それを思った時にすぐに伝えられるのがすごい。
小林にありがとうと言われると、自分がすごいことをしたかのような錯覚をしてしまう。
他人と関わらなくなってから、感謝の言葉を言うことも言われることもなくなった。
だからか、無性に恥ずかしい。
「中田には感謝してばっかりだな。優しいから。」
「優しくなんかねぇよ。」