キラキラしている人がいる
「え、中田、小林のことパシってんの?」
俺が小林にお礼を言おうと口を開きかけたときに、土井が口をはさむ。
俺が、小林を、パシリに?
「てめ…」
「違うよ土井!誤解を招くようなこと言わないで。」
笑顔だった小林が表情をしまいこんだ。
いつだって笑顔やおどけた顔しか見せないこいつの真剣な顔が、こんなにきれいだなんて思ってもみなかった。
「ち、違うならいいけど…悪い、なんか心配になって…」
「…あれ、でも言われてみれば、買ってきてって頼まれたから素直に買ってきちゃったけど、どうしようこれでお金払ってもらえなかったら…見方によってはパシリに思われても仕方ないのか…?」
一瞬で真剣な顔は崩され、おどけた表情で話す小林。
本気で言っていないことは分かるが、少しでもパシリにされたという気持ちがあるのならば、それはかなりショックだ。
「小林、これいくら?」
「110円。」
「俺がそんな金けちるほど金持ってないように見えんのかよ。」
「見えるわけないじゃん。ピアスしてるし。」
「…その認識はよくわかんねーけど、俺がお前の事パシリにするわけないだろ。ふざけたこと言ってんなよ馬鹿。」
財布から220円を取り出し、小林に渡す。
「あれ?中田、お金の数え方わかるー?」
「…お前って本当に俺のこと馬鹿にしてるよな。この間のあんドーナツの分。」
「あれはお礼だからいいんだよ!感謝の貢ぎ物にお金払ってもらったら意味ないじゃん!」
「いいんだよ。もらえるもんはもらっとけ。」
「ダメ。」
「…じゃあ明日のパンの分の金って言ったら受け取る?」
「…それなら、うん。明日も買ってくる!ありがとう!」
キラキラ、キラキラ。
輝きを強めた瞳から漏れ出した光が俺にまで飛んでくる。
この輝きは伝染するのか。
「こちらこそ、ありがと。」
なんだか心がふわりと軽くなった。