冷酷な公爵は無垢な令嬢を愛おしむ
 解放された時には息も絶え絶えで、ぐったりとレイの見かけよりも逞しい身体にもたれていた。

 レイに散々貪られた唇が熱を持っている。

 唇だけではなく身体にも経験した事のない火照りを感じていた。

「どうして……」

 混乱する中、無意識にそう呟くと直ぐにレイの声が耳に届いた。

「当然の事だろ? 俺達は婚約していていずれは結婚するんだから」

 甘い声音。愛しそうにそっと頬を撫でられる。

「でも、今までこんな事無かったのに」

 抵抗できない程強く抱きしめられてキスをされた時、何もかもレイに支配されているような錯覚に陥った。

「エレインに言われたんだ。のんびり構えていると他の誰かにローナを攫われるって。ローナに俺の婚約者で有る事の自覚が欠けている事は明らかだったから、この際立場をはっきりとさせておこうと思ったんだ。ローナは俺のものだ、他の誰にも渡さない」

 見つめられながら言われた言葉に、私は真っ赤になってレイから目を逸らした。

 見慣れたはずのレイの顔が別人のように見えたからだ。今までにない程、レイは男なんだと実感する。

「だ、だからって同意もなく急にキスするなんて酷いわ」
「結婚の申し込みを受けて婚約した時点で同意したって事だろ?」

 レイは心外だとばかりに顔をしかめる。

「突然のキスなんて同意した覚えは無いわ!」

 慌てて言い返すとレイの目がすっと細くなった。

「ならばローナはどんな気持ちでいたんだ? 俺からの求婚を受けた。それは結婚して俺の子供を産む事に同意したと言う事だと思っていたが違うのか?」
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