冷酷な公爵は無垢な令嬢を愛おしむ
婚約者の溺愛
 どうしてこうなったのだろうと、つくづく思う。

 レイの豹変ぶりについていけない。

 あの夜以来、レイは頻繁にルウェリン邸を訪れるようになった。笑顔でやって来てはその日の私の行動を細かく聞き出そうとする。

 監視されているように思えて落ち着かない。


 プレゼントが山のように届くようになった。
 主に身に付けるものでレイの好みと思われるドレスや、装飾品がもう仕舞う場所が無い程に溢れている。

 こんなにお金を使って、アークライト家は大丈夫なのかと、余計な心配をしてしまうくらいだ。



 最近のレイからは私に対する、恐い程の執着を感じる。

 まるで絶世の美女と謳われた建国王の寵姫のような扱いをされている気がする。

 侍女が整理しているレイからのプレゼントを眺めながら、物語で見た寵姫ナイアの絵姿を思い浮かべる。

 それから鏡に自分の姿を映してみて、がっくりと項垂れた。
 寵姫の面影なんて一切ない平凡な姿をそこに見つけたから。

 平凡な背丈、平凡な体系。
 若草色の瞳を家族や親しい友達は綺麗と言ってくれるけれど、造作自体はごく普通。決して美女とは言えない顔だ。

 癖のないプラチナブロンドの髪が唯一容姿で誇れるところだけれど、それを含めても社交界には私よりずっと綺麗な令嬢が溢れている。

 その令嬢達の憧れの的で、身分、能力最高の貴公子であるレイに執着される点が贔屓目に見ても私には見当たらない。

 婚約の申し込みは、条件有ってこそ納得が出来た事なのだ。

 だからレイが囁く愛の言葉を、あからさまな愛情表現を、素直に信じる事が出来ないでいた。
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