冷酷な公爵は無垢な令嬢を愛おしむ
 その夜も律儀にルウェリン邸を訪れたレイに、私は早速プレゼントを控えるように話してみた。

 レイは神妙な面持ちで頷いたのでホッとしたのも束の間、なんとも的外れな事をのたまってきた。

「俺の配慮が足りなかったな。仕舞う場所が足りないのなら今度はクローゼットを贈ろう」

 がっくりしたけれど私は根気強く訴える。

「そういう事をお願いしたつもりは無いわ。私が言いたいのはプレゼントはもう充分だって事。こんなに沢山ドレスが有っても着る機会が無いから無駄になってしまうの」

 私はエレインや他の上級貴族の令嬢達のように頻繁には夜会に出ない。
 ルウェリン家には招待状自体があまり来ないのだ。
 レイに連れられて参加する夜会でくらいしかプレゼントされた豪華なドレスを着る機会がない。

 大切に保管しておくにしても、ドレスには流行があるから来シーズンには着辛くなってしまうだろう。

「ならばもっと着る機会を増やすか?」

 なぜそうなる?

「ねえレイ、どうしてそんなにプレゼントをしようとするの?」

 いくらお金持ちだからといってもやり過ぎだと思う。

「……他に気持ちを伝える方法を思いつかない」

 レイは珍しく歯切れ悪く答えた。

「気持ちを伝える方法って……レイはいつも好きだって言ってくれてるじゃない」

 あの夜会からレイとは毎日会っているし、愛の言葉も貰っている。

 自ら言うのは恥ずかしく、私も小さな声になると、レイが悩まし気な表情で答える。

「でもローナに信用されていない気がする」
「それは……」

 その通りなので私は一瞬言葉に詰まる。
 レイはそれを見逃さず、詰め寄って来た。
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