冷酷な公爵は無垢な令嬢を愛おしむ
 レイはしばらくすると、ようやく言葉を発した。

「大分誤解があるようだ」
「誤解?」
「ああ。まずはプロポーズの件だが、俺は束縛するなと突き放すような事を言った気は無かった」

 私は大きく目を見開いた。
 そんな筈はない。私はしっかりこの耳で聞いたのだから。
 かなり衝撃を受けた台詞だったので鮮明に覚えている。

「結婚なんて面倒だ。気位の高い女に束縛され干渉される未来しか想像出来ないってレイが言ったのよ?」

 私の問いに、レイはすぐさま答える。

「実際そうだろ? 周りが勧める見合い相手の女は気位が高いのばかりだ。そんな女との結婚なんて悲惨な未来しか想像出来ないな」

「だから私なら大丈夫だと思ったんでしょう? 結婚してルウェリン家への援助をしようと思ったんでしょう? 私なら束縛しなそうだし、例え妻を蔑ろにしている事が噂になっても、援助をしてもらう立場のルウェリン家がアークライト家に物申す事なんて出来ないから、自由に出来て楽だと思ったんでしょ?」
「俺がローナを蔑ろに?……そんな風に思っていたのか?」

 レイはショックを受けたように呟いた。

「だって…… 話の流れからそう言う事だと思ったから」
「ローナなら大丈夫だって言ったのは、ローナになら束縛されても干渉されても嫌じゃ無いから大丈夫だって意味だったんだ」
「……えっ?」

 つまり、私の受け取り方が間違っていたって事?

「でも……それなら普通にプロポーズしてくれたら良かったのに」

 貴族の青年が真剣に結婚を考えてプロポーズする時は、だいたいがまずは女性の父親の許しを得る。
 相手の家の許しが出たら婚約し、一定の期間を置いてから結婚とする流れだ。

 もし家を通さず直接的本人に言うとしても、まずは愛の言葉を口にすると思う。
 好きだ。とか愛しているとか。

 私はレイにそんな言葉は貰わなかった。
 レイの結婚観の愚痴を聞かされ、それから条件的なものを並べられた後、俺と婚約しないか?と言われたのだ。

 誤解したって不思議は無いと思うけど。
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