冷酷な公爵は無垢な令嬢を愛おしむ
「そうだな。確かに俺の言い方が悪かった。正直自信がなくて強く迫れなかった。俺の気持ちを伝えるより、ルウェリン家の援助の件を出した方がプロポーズを受けて貰えると思ったからあんな言い方になってしまった。ローナが誤解しても仕方ないな」

 後悔しているのか、レイは悔しそうに言う。

「どうして断られると思ったの? レイは王女だって望める程の立場なのに」

 しがない男爵令嬢の私がなぜ断ると思ったのだろう。

「ローナは昔から俺に関心が無いだろう?」
「そんな事ないわ」
「いや態度で分かる。あの夜会以前は俺の事を異性として全く意識していなかった」

 鋭く指摘され私は言葉に詰まった。
 レイの言う通り、あの夜会の後から私はレイを強く意識するようになった。
 あんな風に強引に迫られたら、どうしたって意識してしまう。

 だけど、それまではどうだったかと問われると、全く意識していなかった訳ではない。

 確かに私は令嬢達の憧れの的であるレイに恋心を持った事は無かった。
 でもそれはレイに関心が無かったからじゃない。

 私達は幼馴染。子供の頃からの知り合いだ。
 どんどん素敵な貴公子になっていくレイに見惚れたりした事も実は何度かある。

 でも私は自らその気持ちを恋愛感情に発展させないようにしていたのだ。

 つい最近まで、レイはエレインの事を好きだと思っていたから。
 周りの大人達もレイとエレインを似合いのふたりだと言っていた。
 そんな中、私が入る隙なんて無いと思った。だったら初めからレイを好きにならない方が傷付かなくて済む。

 そんな風に自分の気持ちを抑えていると、まるで暗示にかかったように本当にレイの事を異性として見なくなっていた。

「男として相手にされていないと分かっていたが、ローナが家の為に結婚相手を探していると知って黙っていられなくなった。他の誰にも渡したくない。打算的な関係でもとにかく俺のものにしたかったんだ」
「それで、突然のプロポーズを……」
「ああ、俺にとっては突然でも無かったけどな、ずっとローナを女として見ていたから……ローナも今なら少しは俺を意識してくれているよな?」

 レイが切なそうに私を見つめて来る。

「意識してる。レイのせいでね」
「そのまま俺を好きになればいい。絶対幸せにするから」

 そんな事を言われたら、私もなんだか切なくなってしまう。
 今さらプロポーズのような事を言うなんて、ずるい。
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