冷酷な公爵は無垢な令嬢を愛おしむ
 最近、レイが変わった。
 とても優しくなった。

 私に対して、思いやりを持って接してくれているのが伝わって来る。

 相変わらずプレゼントは贈られて来るけれど、私が持て余してしまうようなものでは無い。
 その時私が望んでいるものを贈ってくれるようになった。

 今日のプレゼントは、隣国の風景画。

 兄が最先端の農地転用について学ぶ為に留学している国だから、私は以前から興味があって、その話をするとレイは今すぐ連れて行く事が出来ない代わりにと、美しい風景画を贈って来てくれたのだ。

 光差す森と、その中に佇む城の絵は幻想的で美しい。
 別名緑の国と呼ばれる隣国のイメージ通りの絵だ。

 早速部屋に飾り眺めていると、仕事を終えたレイが今夜もやって来た。

「気に入ってくれたようだな」

 良い場所に飾られた絵に気付いたレイが嬉しそうに言う。

「とても気に入ったわ。ありがとう」

 私の部屋にもすっかり慣れたレイが当たり前の様に隣に座って来る。
 ソファーが小さめなので、体が触れそうな程距離が近い。

 この距離感に慣れてしまったけど、初めはかなり戸惑ってしまったものだ。

「来週一緒に出かけないか?」
「夜会があるの?」

 レイのアークライト公爵家には、沢山の夜会の招待状が届く。

 全てに参加するのは無理だから、どの夜会に出るかは慎重に検討しているそうだけど、その中でパートナーが必須の夜会に関しては、婚約者の私を伴う。

 だから今回もそのお誘いかと思ったのだけれど、レイにあっさりと否定された。

「夜会じゃない。日中どこかにふたりで出かけようって言ってるんだ」
「え、でも仕事は? 大丈夫なの?」

 宰相補佐の一人であるレイはとても忙しく、日中丸々休みなんて事は今まで無かったのに。

 心配する私に、レイは穏やかに微笑んで頷いた。

「ずっと働き詰めだったからな。一日くらい休みを取っても問題ない」
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