冷酷な公爵は無垢な令嬢を愛おしむ
◇◇◇

 待ちに待った、レイの休暇の日になった。

 私は数日前から用意していた動きやすい簡素な服を身に付け、レイが迎えに来るを待っている。

 レイは私は何も持って行く必要はないと言っていたけれど、少しずつ溜めておいた私個人のお金とその他必要そうなものを小さめの鞄に用意した。

 プラムの市には珍しいものが沢山有るらしいから、家族やいつも頑張ってくれている侍女達へのお土産を買いたい。

 それから一番の目的。レイに日頃のお礼のプレゼントしたいと考えている。
 いつも貰ってばかりだから、たまには私から何かを贈りたい。

 レイは何でも持っているから、豪華なものよりも珍しいものの方が新鮮で喜んでくれるんじゃないかと思う。
 プラムは王都に出回っていない品物があるらしいから、期待できる。

 もしこれいといった品が無ければ、綺麗な生地を買って、それで寛ぐ時に使う羽織り物を手作りする予定だ。

 あれこれ考えながら待っていると、時間より少しだけ早くレイがルウェリン邸にやって来た。


「レイ、おはよう」

 出迎えに玄関ホールに出た私は、レイの姿を見て思わず足を止めその場で立ち尽くした。

 今日のレイはごく一般的な身分の兵士が着用する、濃灰色の飾り気の無い服だった。

 王都でよく見かけるものだけれど、レイが身に付けるとまるで別物に見える。

 地味でしかないはずの濃灰色はレイの銀髪を引き立てる良い役割をしている。
 装飾を極力省いたデザインは、レイのバランス良いスタイルを引き立てている。

 整った顔と醸し出す雰囲気が、平凡な衣装を特別なものに変えているように思える。

 レイは目立たないようにと、この辺ではありふれた格好で来たのだろうけど、残念ながら目立ってしまう事は間違いない。

 それに比べて、簡素な衣装の私は簡単に町に紛れる事が出来そうだ。

 目立たなくて良い事だと思うけど、少し複雑な気分。

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