冷酷な公爵は無垢な令嬢を愛おしむ
 私にとっては珍しい光景をひたすら眺めていると、レイが言った。

「王都程ではないがプラムの町には多様な人間がいる。悪い奴もいるから独りでウロウロするなよ? 俺から離れるなよ」
「分かってるわ。迷子になったりしないから安心して」
「本当だな?」
「本当よ。レイって結構大げさね」

 そんなに念押ししなくてもいいのに。
 くすっと笑いながら言うと、レイはむっとしたように眉をひそめた。

「大げさじゃない。最近若い女が連れ去られる事件が発生しているんだ」
「そうなの?」

 そんな事件初耳だ。私の友人の間でも話題にはなっていないと思うけど。

「まだ犯人は見つかっていないから油断できない」
「分かった。プラムではレイの近くから離れないようにするわ」

 多分大丈夫だとは思うけど、用心するに越した事はない。

「絶対だぞ。ローナは可愛いから狙われる可能性が高いからな」

 それは無いと思う。でも心配してくれる事は素直に嬉しい。

 レイが私を大切に想ってくれているんだと感じるから。


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