冷酷な公爵は無垢な令嬢を愛おしむ
 昼食は、事前にレイが調べておいてくれたカフェで取ることにした。

 私は瑞々しい野菜を沢山使ったベジタブルサンド。レイは鴨のローストだ。

 飲み物はふたり共カフェのお勧めだというハーブティー。

 サンドイッチもハーブティーも、どちらもとても美味しい。

「とても美味しい。レイの鴨はどう?」

 私の言葉に黙々とフォークとナイフを動かしていたレイが手を止めて、仏頂面で答えた。

「悪くない」
「……そう」

 どうやら機嫌を損ねてしまったらしい。

 私がせっかくのレイの親切を受け取らなかった事が悪いんだけど、そんなに臍を曲げる事ないのに。

 レイは贈り物が大好きなようだから、それを否定されるのは私が思って以上にストレスなのだろうか。

 分からないけど、せっかくふたりで遊びに来たのだ。

 こんな機会は滅多にないのだから、楽しく過ごして良い思い出にしたい。私から歩み寄って早く仲直りしてしまおう。

「レイ、さっきはごめんなさい。せっかくの好意を拒否するような形になってしまって」

 サンドイッチを食べる手を止めて謝ると、レイは眉間にシワを寄せた。

「初めに買うか悩んでいたのは、金額が折り合わなかったからじゃないのか? それなのにどうして無理して自分で買ったんだ?」
「それは諸事情あって」
「諸事情って? 俺に買わせたくない理由ってなんだ?」
「さっきも言ったけど、いつも貰ってばかりじゃ悪いと思ったから」

 今まで散々プレゼントを受け取って来た身では弱い言い訳だと思ったけど、出来ればレイへのプレゼントの事はまだ内緒にしておきたい。

 出来上がったものを渡して驚かせたいのだ。

 でもレイは納得いかないようだった。
 それどころか予想外の事を言って来た。
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