冷酷な公爵は無垢な令嬢を愛おしむ
午後はまたお店巡り。
事前にレイが調べてくれていた、評判の良い店を幾つも回った。
家族へは珍しい異国の絵を。
次女達には可愛らしい包装の流行りのお菓子をそれぞれお土産に買った。
お店巡りが終ると散策をして、通りから少し離れた所にある自然の花畑に移動した。
サワサワとそよぐ風の中、黄色くとても大きな花が、空に向かって咲いている。
「元気そうな花ね、何て名前の花かしら」
私はあまり花に詳しくない。
レイも疎いようだけれど、この花に関しては事前に調べてくれていたようだ。
「向日葵と言う花だそうだ。王都の花屋にも出回っているそうだが、ここらに咲いているのは野生の向日葵だそうだ」
「向日葵……これだけ大きな花が自然に育つなんて凄いわ」
「ああ、驚くべき生命力だな」
私の背丈くらいある向日葵を、レイは興味深く観察している。
アークライト家の見事な庭園には関心が無さそうなのに、野生の花には興味があるなんて何だか面白い。
ふと気付くと、太陽が傾き辺りはオレンジの光に包まれ始めていた。
段々と夜に向かっているようだ。
天に向かって力強く咲く向日葵。
穏やかに拭く風の中、佇むレイ。
オレンジ色の夕日がそれらに影を差す。
「綺麗」
思わず呟く。
ずっとこのままここに居たい。
名残惜しさ、寂しさを感じる。
だけどもう帰る時間だ。
レイが私に近づいて来る。
「ローナ」
レイが差し伸べて来た手を私は躊躇いなく掴み言う。
「今日はともて楽しかったわ」
「ああ」
「レイと一緒に来られて良かった」
レイも同じ気持ちだと嬉しいけど。
そう思ったのと同時に、レイの腕に力が篭り引き寄せられ、私はレイの腕の中に収まっていた。
「レイ!」
いつ人が来るか分からないこの状況での抱擁に慌ててしまう。
けれどレイは構う事なく、更に力を込めて私を胸に引き寄せる。
「ローナ。思い込みで勝手に怒って疑うような事を言って悪かった」
「その事はもういいの、気にしていないわ」
「俺が悪いのにローナはいつも広い心で許してくれるな。俺の方が年上なのにローナの方がずっと大人だ。こんな事じゃいつかローナに愛想をつかされるな」
いつになく弱々しいレイの言葉に驚いた。
私は、レイの背中に手に手を回し、力を込めて抱き締めた。