冷酷な公爵は無垢な令嬢を愛おしむ
「レイが弱音を吐くなんて珍しいわ」

 いつも堂々としていて、令嬢達の憧れの的のレイが。

「ローナに対してだけは、昔から自信が無くなるんだ」
「レイが? なんだか信じられないわ」

 自信が無いのは私の方がよっぽどだ。
 だけど本当にレイに自信が無くて不安を感じているのなら、それを取り除いてあげたい。

「私、レイの事が好きよ」

 私だったら不安な時は言葉が欲しい。気持ちを真っ直ぐ伝えて欲しい。
 そう思うから少し恥ずかしいけれど、続けて言う。

「レイだけが好き。本当は子供の頃から好きだったのだと思う。レイとは釣り合わないと思っていたから気持ちに蓋をしていたけで……レイをどんどん好きになって、報われない想いに傷付くのが怖かったんだと思う」

 だけど、これからはもっと自分の気持ちに正直でいようと思う。

 今までの私は身分や立場に、誰よりも自分自身が囚われて、いろいろな事を先回りして諦めて来ていた。

 そうしていれば酷く傷付く事はない。
 だけど幸せとも言えない。

 今日、レイと過ごしていて、とても楽しかった。幸せだと感じる。

 なんの不安も無いと言ったら嘘になる。将来傷付く事があるかも知れない。それでもレイと本当の夫婦として寄り添っていきたい。

 私はいつかレイの言った通り、深い恋へと一歩踏み出してしまった。
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