冷酷な公爵は無垢な令嬢を愛おしむ
 広間の隣室には軽い食事と飲み物、デザートが並べられていた。

 私は色鮮やかなデザートが並ぶ一角に行くと、チョコレートを手に取り口に運んだ。

 深みのある甘さに滑らかな舌触り。
 流石は公爵家の夜会に出されるチョコレートだ。感動で思わず唸りそうになる。
 もう一つ頂こうと手を伸ばした時、聞きなれた声で名前を呼ばれた。

「ローナは相変わらずね」

 振り向くと、豪奢な金髪に同色に瞳の美女が居た。
 予想通りの相手だから特に驚きもせずに私は小さく微笑んだ。

「エレインも相変わらずね」

 エレインは、私から見て母方の従姉にあたる。年が近い為、幼い頃から仲がよく一番の親友とも言える存在だ。

 ただ従姉といってもその立場は大分違う。

 エレインの実家は裕福な伯爵家。
 流行の最先端のデザインのドレスを見事に着こなす美しい彼女は、どの夜会でも注目を集める社交界の華だ。

 今夜のドレスも初めて見る新作だ。派手で豪華な赤だけれど、決して衣装負けしていない。

「赤いドレスがとても似合っているわ」

 感心して言うと、褒められていると言うのにエレインはつまらなそうに表情を曇らせる。

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