冷酷な公爵は無垢な令嬢を愛おしむ
 太陽はすっかり傾いて辺りは薄暗闇に包まれている。遠目から私の事を見つけるのは難しいはずだ。

 だけどレイは……。

 私達が元いた場所では争いが始まっていた。
 私からも向こうの様子をはっきり見る事は出来ないけれど、相手は3人以上いるように思える。

 レイは隙を見て逃げる気はないのか、その場に留まり相手をしていた。

 怒号と、恐らく武器がぶつかり合う金属音が僅かに聞こえる。

 レイは大丈夫なの?
 レイにもしもの事があったら、私はどうすればいいのだろう。

 不安で涙が溢れて来る。

 何も出来ない自分が悔しいのに、恐くてただ震えて泣く事しか出来なかった。
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