冷酷な公爵は無垢な令嬢を愛おしむ
 いつの間にか辺りは静かになっていた。

 向日葵畑の周りはもう真っ暗で、直ぐ近くの様子しか窺えない。

 レイは無事なの?

 隠れていろと言われたけれど、ここを離れてレイを探しに行った方がいいのだろうか。

 怪我をして動けなくなっていたとしたら、早く助けに行かないといけない。
 でももしまだ戦いが続いているとしたら、私が出て行くと邪魔になる。

 不安なまま悩んでいるとガサリと地面に落ちが葉を踏みしめる音が聞こえて来た。

 誰かがいる?

 恐怖に息を殺して震えている内に足音は大きくなった。
 動く事も出来ない私の前に、レイが姿を現した。

「ローナ! やっと見つけた」
「レイ!」

 それまで動かなかった身体が勝手に動く。
 私は夢中でレイに縋りついていた。

 レイが力強く抱き返してくれながら、私の様子を心配する。

「ローナ大丈夫か? 怪我はしていないな?」
「大丈夫……」

 レイが私だけ逃がし守ってくれたのだ。
 どこも怪我なんてしていない。

「レイは大丈夫なの?」
「かすり傷くらいだ。問題ない」
「かすり傷?」

 私は慌ててレイの身体を確かめる。

 暗くて良く見えないせいもあり特に目立った怪我はないように見えるけれど……。

「本当に平気なの? どこか痛いところはない?」
「これでもそれなりに鍛えているから大丈夫。どうって事はないから俺の事は気にするな」
「でも……」

 とても“これくらい”で済ませられる状況ではなかったと思う。

「それよりローナの方が心配だ。歩けそうか?」
「ええ……」

 本当は身体中震えてしまっているけれど、何時までもここには居られない。
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