冷酷な公爵は無垢な令嬢を愛おしむ
「具合が悪く伏せっていると聞いていましたけれど、思ったよりもお元気そうで良かったですわ」
来客対応用の応接間で向かい合って座る令嬢は、ベイリー男爵家のキャシー様。
ストロベリーブロンドにオレンジの瞳の、驚く程に線の細い儚気な令嬢だ。
彼女は挨拶が済むと、社交的な笑みを浮かべながら言った。
彼女とは個人的な交流は無いけれど、年齢と家の身分と経済力が近い為、以前から存在は知っていた。
彼女の話によれば、私は体調を崩している為、暫く社交場には出られないと言う噂になっている。
今まで元気だった私の突然の病に驚き心配してお見舞いに来てくれたそうだ。
その話を聞いたわたしは、非常に申し訳ない気持ちになった。
なぜならその話は、長く引き籠っている事で周囲から不審に思われないようにとレイが考えた言い訳だからだ。
しかも彼女の様子を見ると私の体調不良はレイが考えた設定よりも相当重症との噂になってしまっているようだ。
噂はだいたいが誇張されていると言うけれど、自分自身が噂の張本人になる事で改めて実感した。
「キャシー様、お見舞いありがとうございます。ご覧の通りもう大分良くなりました」
「そうみたいですね。安心しましたわ」
キャシー様は柔らかく微笑むと、漸くお茶に口を付けた。
暫くの間、当たり障りない社交界の軽い噂話をしていると、キャシー様は不意に思い出したかのように、レイの話題を振って来た。
「そう言えば、アークライト様はパートナーのローナ様が不在から困った事になってしまった様ですわ」
婚約者がいる男性は、通常夜会には婚約相手の女性を連れて参加する。
ひとりで参加すると婚約者との仲を疑われたり破局を噂されたりと、面倒な事が増えるのだ。
だからこそ体調不良を理由に引き籠っていたのだけれど、しばらくはレイも夜会は参加しないと言っていたから、問題無いと思っていた。それなのに……。
「困っているとはどういう意味ですか? 彼に何か問題でも?」
来客対応用の応接間で向かい合って座る令嬢は、ベイリー男爵家のキャシー様。
ストロベリーブロンドにオレンジの瞳の、驚く程に線の細い儚気な令嬢だ。
彼女は挨拶が済むと、社交的な笑みを浮かべながら言った。
彼女とは個人的な交流は無いけれど、年齢と家の身分と経済力が近い為、以前から存在は知っていた。
彼女の話によれば、私は体調を崩している為、暫く社交場には出られないと言う噂になっている。
今まで元気だった私の突然の病に驚き心配してお見舞いに来てくれたそうだ。
その話を聞いたわたしは、非常に申し訳ない気持ちになった。
なぜならその話は、長く引き籠っている事で周囲から不審に思われないようにとレイが考えた言い訳だからだ。
しかも彼女の様子を見ると私の体調不良はレイが考えた設定よりも相当重症との噂になってしまっているようだ。
噂はだいたいが誇張されていると言うけれど、自分自身が噂の張本人になる事で改めて実感した。
「キャシー様、お見舞いありがとうございます。ご覧の通りもう大分良くなりました」
「そうみたいですね。安心しましたわ」
キャシー様は柔らかく微笑むと、漸くお茶に口を付けた。
暫くの間、当たり障りない社交界の軽い噂話をしていると、キャシー様は不意に思い出したかのように、レイの話題を振って来た。
「そう言えば、アークライト様はパートナーのローナ様が不在から困った事になってしまった様ですわ」
婚約者がいる男性は、通常夜会には婚約相手の女性を連れて参加する。
ひとりで参加すると婚約者との仲を疑われたり破局を噂されたりと、面倒な事が増えるのだ。
だからこそ体調不良を理由に引き籠っていたのだけれど、しばらくはレイも夜会は参加しないと言っていたから、問題無いと思っていた。それなのに……。
「困っているとはどういう意味ですか? 彼に何か問題でも?」