冷酷な公爵は無垢な令嬢を愛おしむ
「何も無いところに噂は立ちませんわ、あのふたりは毎日のように会っています。普通は婚約者でもない男女が用も無いのに会う事はありません。ローナ様もそう思いませんか?」
「……キャシー様はなぜその事をご存知なのですか?」
「知っているのは私だけではありませんわ。レイ・アークライト様は連日ティアナ様を連れて夜会に出席されていますのよ。夜会の間は常にふたりで過ごされていますし、堂々とダンスもされています。それが終わると夜会の主催者に用意させた別室にふたりきりで籠られてしまうのです。中で何をされているのかそのまま帰るまでの長い時間出て来ない……誰が見ても恋人同士といった様子ですわ」
「レイが……夜会に?」

 仕事でそんな暇は無いのでは無かったの?
 いつもの宰相補佐の仕事だけでなく、王太子殿下からの特別任務をこなし、女性連れ去りの犯人も捜すんじゃなかったの?

「アークライト様の下へは貴族達から山のような招待状が届くのでしょうね。毎夜何かしらの会に参加されているようですわ」

 毎夜の参加? 私には夜会なんて面倒だ。付き合いだから仕方無いけれど、必要最低限で済ませたいと言っていたのに?

 その夜会で堂々と女性と二人きりになっている?

 レイがそんな事をしているなんて想像もしていなかった。

 プラムの街へ行って以来顔を合わせていなかったけれど、レイの言葉を信じていた。レイの言葉を疑う事なんて考えもしなかった。

 知らされた情報は私にとって辛すぎる事だった。

 レイが他の女性と……創造するだけで胸が痛い。

 溢れそうになる涙を止めたのは、キャシー様の声だった。
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