冷酷な公爵は無垢な令嬢を愛おしむ
「そんな事よりローナはどうして毎回こんな所にいるの? レイはまた悪友のところ?」

 エレインにとってもレイは幼馴染だから口調も気安い。それにしても、

「悪友って……」

 レイの友人は王太子殿下を始め身分高い方々ばかりだと言うのに、なんて事を言うのだろう。

「間違いないでしょう? 婚約者連れのレイを当たり前のように呼びつけて独占しているのだから」

「彼らが無理矢理呼んでるって事はないでしょう? レイだって楽しそうにしているんだから」

「……前から思ってたけどローナは悔しくないの?」

 エレインが不満そうに零す。

「悔しいって?」

 首を傾げるとエレインは苛立ったように少し声を荒げた。

「もう! わざととぼけているの? レイの周りの人間は常にローナを居ないものとして扱うじゃない。少しもローナを認めていない、肝心のレイだっていつもローナを放っておいてるし、そんな扱いをされて悔しくないの?」

「悔しいなんて思わないわ」

 レイの属する集団に身分違いの自分が混じりたいとは思えないし、そもそもレイに対してエレインが言うような気遣いは望んでいないのだ。

「どうして? ローナはレイの婚約者でしょう? それなのにこの状況で何も感じないとしたら鈍感すぎるわよ!」

「……そうね、私は鈍感なのかも」

 私はエレインからさり気なく視線を逸らして答える。
 嘘を吐くときに相手の目を真っ直ぐ見るのは難しいし、勘の鋭いエレインに心の内を見透かされそうな不安を感じたから。
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