冷酷な公爵は無垢な令嬢を愛おしむ
婚約者と恋に落ちた
 予定では、レイにルウェリン邸まで送って貰って、そこで今回の事情を聞くはずだった。
 それなのに、気が付けばなぜか私は王宮の奥深く、王太子殿下の宮に居た。

 あの日レイ達に助けられ家に帰ると途中の馬車で、私は身体のだるさを感じ眠ってしまった。
p
 誘拐なんで初めての経験をして疲れてしまったのだと思っていたけれど、実は発熱してきて、それで眠ってしまったようだ。

 私の熱に気付いたレイは、慌てて医者に診せようとしたけれど、その時王太子殿下と相談して、私の事はしばらく王宮で休ませる事にしたそうだ。

 助けられるまでは神経が張り詰めていた為か気付かなかったけれど、私の身体は大小の痣が出来ていた。
 体力が少なく怪我の耐性も無い私はそのまま数日寝込んでしまって、結局未だに事件のあらましを聞けないままだった。

 レイは一晩中一睡もしないで私を探し、助けに来る道中でかなり無理をしたそうなのに、翌日から何時も通りに仕事をこなしていた。
 相変わらず多忙のようで朝早くから夜遅くまで働き詰めのようだったけれど、必ず私の様子は見に来てくれていた。

 そんな風に過ごして迎えた今日。
 私は漸く今回の事の説明を受ける為、レイと一緒に王太子殿下の私的な応接間を訪れていた。

 私はレイに話しを聞けたらそれで良かったのだけれど、王太子殿下が自分からも説明したいと言って聞かなかったそうだ。


 そんな訳で王太子殿下の私室まで来ているのだけれど。

 夜会以外で王宮に入るのだって初めてなのに、更に奥の王太子殿下の私的な空間に立ち入るなんて、良いのだろうか。

「ねえ、レイ。本当に私がここに居て大丈夫なの?」

 心配になって聞くと、レイはすっかり寛いだ様子で気楽な口調で言った。

「そんなに硬くならなくて大丈夫だ。サイラスに何か言われても俺が守るから」

 私は王太子殿下に何か言われる事を心配している訳じゃ無いのだけれど。それにしても、

「前から気になっていたんだけど、王太子殿下への口の利き方は大丈夫なの?」

 レイは最高位の貴族だけれど、王族に無礼な態度は許されないはずだ。

 それなのに言私が見る限り、身分関係なく言いたい放題だから、心配になってしまう。
< 67 / 74 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop