冷酷な公爵は無垢な令嬢を愛おしむ
「公の場では弁えてるから心配しないで大丈夫だ」
と言うことは、私的な場では遠慮ない口利きでいいという事?
「レイは随分王太子殿下と親しいのね」
「幼馴染だからな」
そう言えばレイは元々王太子殿下の側近になる為に、幼い頃に引き合わされたと言っていたっけ。
「だからレイは王太子殿下に遠慮が無いのね」
レイは頷いたけれど、やはり納得がいかないのか、不満そうに言う。
「あいつもあり得ないくらい人使いが荒いけどな。特に今回はティアナ嬢が絡んでいたから本当にこき使われたし、自らも敵に飛び込んで行くし散々だった。最悪なのがローナを巻き込んでしまった事だ。ああ、思い出しても腹が立つ!」
どうやらはっきりと思い出してしまったようで、レイはイライラと頬杖をつく。
私を襲った犯人達をどうしても許せないそうで、何かと思い出しては、不機嫌になっているようだ。
何とかしないとと考えているのだけど、それよりも今、レイが名前を出したティアナ嬢のことを聞きたい。
レイの話では、王太子殿下が、ティアナ様を熱愛しているように聞こえたけれど。
「レイ、ティアナ様は、王太子殿下とも何か関係が有るの?」
「ああ、それは……」
レイが応えてくれようとした時、扉を叩く音が聞こえて来た。
続いて扉が開き、王太子殿下とエレイン、それから私の見た事のない小さな少女が部屋に入って来た。