冷酷な公爵は無垢な令嬢を愛おしむ
私が話を全く理解出来ていない事を察したのか、エレインが王太子殿下に言ってくれた。
「サイラス殿下。ローナはレイからまだ何も聞いていないそうです。一から説明してあげなくては」
「ああ。そうだったな……ローナ。君がアストン子爵の夜会で見たティアナはこちらの本物のティアナの名を騙った偽者だ。我々は成り済ましに気付いた時から、偽ティアナとその協力者を排除すべく動いていた」
では、あの夜見たティアナ様はアストン家の令嬢ではなかったと言う事?
思わずレイに視線を向けると、肯定するように頷いてくれた。
「でも……どういう事なのでしょうか? 子爵家の令嬢の入れ替えなんて、産まれた時でもない限り無理だと思います」
成人して顔が知れ渡っている令嬢がある日別の人間に変わっていたら、大騒ぎになってしまうと思うけれど。
「普通はローナ嬢の言う通りの結果になるだろう。だがティアナの場合は特別だ。ティアナはアストン子爵の私生児でつい最近まで認知すらされていなかった。貴族社会とは無縁で、ひとりで市井で暮らしていたんだ。その為貴族社会にも、実の父親にすらも顔が知られていなかった」
私は驚いて王太子殿下の隣に座る少女を見た。
華奢な身体をした儚い雰囲気の美少女だ。
独りで生きていけるような逞しさは感じない。
「昨年アストン子爵が病に倒れた。弱気になったせいか昔捨てた子供を思い出した。今更のように保護をして子爵家に迎えたいと言い出し、家人皆でティアナ探していたんだ」
随分酷い話だと思った。
ひとりで生きていけない子供の頃に手を差し伸べず、大人になってから会いたいと言い出すなんて。
「サイラス殿下。ローナはレイからまだ何も聞いていないそうです。一から説明してあげなくては」
「ああ。そうだったな……ローナ。君がアストン子爵の夜会で見たティアナはこちらの本物のティアナの名を騙った偽者だ。我々は成り済ましに気付いた時から、偽ティアナとその協力者を排除すべく動いていた」
では、あの夜見たティアナ様はアストン家の令嬢ではなかったと言う事?
思わずレイに視線を向けると、肯定するように頷いてくれた。
「でも……どういう事なのでしょうか? 子爵家の令嬢の入れ替えなんて、産まれた時でもない限り無理だと思います」
成人して顔が知れ渡っている令嬢がある日別の人間に変わっていたら、大騒ぎになってしまうと思うけれど。
「普通はローナ嬢の言う通りの結果になるだろう。だがティアナの場合は特別だ。ティアナはアストン子爵の私生児でつい最近まで認知すらされていなかった。貴族社会とは無縁で、ひとりで市井で暮らしていたんだ。その為貴族社会にも、実の父親にすらも顔が知られていなかった」
私は驚いて王太子殿下の隣に座る少女を見た。
華奢な身体をした儚い雰囲気の美少女だ。
独りで生きていけるような逞しさは感じない。
「昨年アストン子爵が病に倒れた。弱気になったせいか昔捨てた子供を思い出した。今更のように保護をして子爵家に迎えたいと言い出し、家人皆でティアナ探していたんだ」
随分酷い話だと思った。
ひとりで生きていけない子供の頃に手を差し伸べず、大人になってから会いたいと言い出すなんて。