冷酷な公爵は無垢な令嬢を愛おしむ
 騙しているつもりは無いけれど事情を黙っている事が心苦しい。

 かと言って正直に話してしまうとレイとの婚約をエレインに反対され、場合によってはレイの両親にも伝わってしまう可能性もあるから言い出せずにいた。

 レイの両親は息子のレイをとても愛しているから、愛情の無い結婚なんて反対して来る事が予想出来る。


 エレインは今頃レイを責めているのだろうか。
 昔からエレインには弱いレイだから、たじたじになっているかもしれない。

 気になって二人がいるであろう広間の方を覗いてみた。

 距離は有るけど、目立つ二人だから直ぐに見つける事が出来る。

 華やかな人々の中でも一際輝いて見えるふたりは、私の心配とはうらはらに、とても親しそうに微笑み合っていた。

 レイを責めにいったはずのエレインだけど、楽しい話でも振られたのか、そのまま話し込んでしまったようだ。

 私は興味を失い元居た部屋に戻った。元々チョコレートを食べている途中だったのだ。

 甘い蜜に誘われるようにテーブルに近付き、ひとつ摘んだ。
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