もう一人の自分

私はいつまで経っても思春期であるようで、時々雑念に心を悩ませる事があったのだ。其の日もそうであった。朝から曇天で、比例するように気分も曇りである。然し、彼女は例にも寄って笑顔で私に話し掛けて来るのであった。私は泣きそうになった。
私は机に向かい、彼女は部屋の掃除をしていた。私は気分が乗らずに、黙っていた。彼女は上機嫌で掃除をしている。どこまでも幸せな人である。彼女は私にお茶を出してくれた。そうして「貴方は貴方のままで良い」と言ったのだ。私は目を丸くして硬直した。そのような事を言われたのは初めてで、酷く狼狽した。その上、嬉しかったのだ。
彼女曰く、逃げるも、落ち込むも、笑うも、涙を流すも、全て貴方の中にある本当の心がそうさせるのだから、貴方は抗わずとも良い。との事である。それで良いのか、と靄が晴れた気がした。嗚呼、彼女はどれほど強く、素晴らしい人間なのだ。彼女と二人、笑いあった。