COUNT UP【完】
呆れたような表情に声のトーンに一体何を考えているのかさらにわからない。
“あたしだから”なんなの?
“あたしだから”迎えに来てるとでもいいたいの?
でもそれはポンちゃんだって同じこと。
あたしの中で“あたしだから”っていう答えには届くわけない。
そういうのは好意を持った相手に言うセリフであたし相手に言うセリフじゃない。
間違ってそういう気持ちがあったとしても、あたしは絶対ミノルを好きになったりしない自信がある。
「だからさっきも言ったけど、あたしを特別扱いしてるって言い方したって、」
あんたのことは好きにならない―――そう続けようとして遮られた。
それは初めて会ったとき、二日目のときとは比べ物にならないくらい優しくて、だけど強く深いキスだった。
「・・・誰が誰を好きにならないって?」
口唇を少しだけ離して触れたまま話すミノルの顔が超至近距離に見える。
話すたびに互いの口唇が触れて身体が震える。
強い瞳に、強い言葉に、強いキスにあたしの心臓はバクバクいって落ち着かない。
顔を離そうとするけど、その度にキスされて最後には動けなくなった。
かろうじて動かせた視線も無意味だった。
「俺がコレに女を乗せたのはお前が初めてだ。他に女もいない。それにお前みたいな女、普通なら迎えに行ったりしない」
そう言ってあたしとの距離を少しとり、自信満々の笑顔でこう告げた。
「お前は俺を好きになる。てか、もう好きになってる?キス受け入れてるもんな」
ミノルの言葉に自分の行動が恥ずかしくなって顔が熱くなった。
そう言われてみたらそうだ。
嫌いだって言いながらもミノルのキスを嫌だと思わず応えていた。
そんな自分を言い当てられて思わず両手で顔を隠して俯いてしまう。
否定すればいいのに黙って肯定してしまったことに気付いても、もう遅い。
「俺を嫌いになれるといいな」
そう言って意地悪く笑うと外していたメットを被りなおし、バイクを走らせた。
あたしはミノルの服を掴むことすら恥ずかしくて、大学に着いたときにどんな顔をすればいいのか真剣に考えた。
END