COUNT UP【完】
「お前らマジで互いに甘いのな。どっちもひっつきたがりか、ほんとに。おい、ユイ?」
ひっついたままのあたしを見下ろしたミノルと一瞬だけ目を合わせ、黙ってた。
「なんだよ、泣いてないの?超頑張ったな、お前」
えらいじゃん、と頭を撫でられる。
その感触がポンちゃんと違う。
指輪をしたミノルの手のひら。
匂いも違う、声も違う、雰囲気すら何もかも。
「・・・」
「全然えらくねぇじゃん。我慢しながら泣くなよ」
抱きしめられて、すっぽりとミノルに包まれる。
ポンちゃんみたいに抱きつけないけど、ちゃんとあたしを支えてくれる。
泣いてる自分がいるけど、思ってたより寂しくない。
きっとミノルがいてくれるからだと思う。
「これからはユウホの代わりに俺がいてやるから。ユウホがいないんだから俺に甘えとけ。今までの男みたいにユウホに嫉妬することはないし、離れず大事にしてやるから」
ユウホがいないって最高、と笑いながら言うから横腹を殴るとまた笑ってた。
「お前が寂しくないように傍にいてやる」
感謝しろよ、と笑うミノルに出会ったときみたいな感情が出てこなかったのは結局ミノルの策略にハマってしまったっていうことなのかもしれない。
毎日一緒にいれば気を許してしまうこともある。
それがどんな形であれ、あたしの大事な一部になってしまうことも仕方ない。
「違うよ、ミノルがあたしと離れたくないって思うだろうから、あたしが傍にいてあげるんだよ」
「ほー。んじゃ傍にいてもらおうじゃねえの」
涙を拭いてくれるミノルはやっぱりポンちゃんと全然違うけど、ここからちゃんとあたし達の関係を築けるんじゃないかと思うとなんだか不思議な感じがした。
END.