「付き合ってください。」
手紙
「えー…また?」
「また…みたい」
ぼうっと下駄箱の前に突っ立ったまま
動かない私の後ろから
親友のうららが私の手元を覗き込んで
げえ、と女の子らしくない声を上げる。
それくらい、今の私は、否私達は追い込まれているのだ。
「流石に、親とかに相談とかしたら…?」
「むりだよ、なんて言うのさ」
川瀬 杏子(かわせあんず)17歳。
初めて、ストーカーをされているようです。
付きまとわれてるわけでもない
襲われたわけでも、盗聴器を仕掛けられたわけでも、GPSを仕掛けられたわけでもない。
ただ、下駄箱とか
机とかに
ここ1ヶ月毎日のように
いや、毎日手紙が入ってる。
「付き合って下さい、か」
「名前も書いてないのに
無理な話だよねぇ」
うららが眉間にシワを寄せながら
呟いた
本当にその通りだ。
宛名も、宛先も、
前置きも、その後も、何も無い。
ただ一言
付き合って下さいとだけ書かれた紙を入れられても…
「こわい、だけなのになあ」