雨上がりの陽だまりで。~誰よりも優しい君に~


「ずっと、ずっと好きだったよ…」

胸に顔を押し付けられて
紫色がどんな顔をしているのかわからない。

けど、声はすごく辛そうだった。


「じゃあ…何で………?」

「…律が、雨を好きって言ったから」


「え…?」

「律は病気で、余命宣告されてた…それで後は自由に生きたいって」

そう、だったんだ。

「だから、幸せになってほしかった…」

自分の気持ちを押し殺してまで……?


「紫色は……優しすぎるよ」

涙を流す私の目を親指で優しく拭って綺麗に笑うから、胸が高鳴ってあの頃の気持ちが一気に蘇ってくる。

目が合うだけで幸せで。

泣きたくなって。

ドキドキして。

心地よくて。


優しい紫色が、大好きだった──
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