雨上がりの陽だまりで。~誰よりも優しい君に~
「泣いてたの……?」
「…泣かねぇよ」
雨で頬に張り付いた私の長い髪を
紫色は指に絡めながら言う。
「何で、ここにいんの」
濡れたまつげを伏せて優しく私を見つめる君。
「紫色に…会いたくて」
そう言うと少し驚いたように目を見開いて
優しく笑って私の頬を撫でる。
「こんな事言ったら、誰でも期待するって習わなかった…?」
「……紫色…」
「なぁ、雨…ここに居るってことは全部知ってるってこと……?」
そう言った紫色は俯いていて、垂れた髪でその表情はわからなかった。
「……うん、知ってる」
「はぁ…誰だよ個人情報、勝手に漏らすやつ」
そう言って紫色は戯けて笑う。
「俺ひとり暮らしなんだ」
思えば紫色の家は紫色以外の人が、生活しているような後はなかったように思える。
「父さんは事故、母さんは自殺」
え………
「母さんはさ、父さんが大好きで…後を追うように逝ったよ」
“俺を置いて”
そう言った君の顔は切ないほど悲しくて。
紫色は、その笑顔の裏で
何度涙を流したの……?
今思えば、時々目を赤くして学校に来ていた。
伊達メガネをして、『寝不足』って言って笑って。
あの家で1人でずっと、孤独と戦ってたの?
「親戚と一緒に住んでることになってるけど…実際見放されて、中学の途中から1人で暮らしてた」
あぁ、だから…料理出来るんだ。