雨上がりの陽だまりで。~誰よりも優しい君に~


体育館中から啜り泣く声が聞こえる。

「………っ…」

もちろん、私なんて号泣だ。


これじゃあ、この後の歌なんて歌えやしない。

《式歌、斉唱》


♪.•*¨*•.¸¸♬



みんな、泣きながら震える声で歌う。

最後の合唱。


《卒業生、退場》

大きな拍手に包まれて、

私たちは体育館を後にした。


「紫色くんの挨拶やばかったー!」

「逢瀬の挨拶は本気で泣いた!」

そんな声がそこかしこから聞こえる。

「律くんに会いたいね……」

そう誰かが呟けば、みんな涙をこぼす。


「お前ら、律ならいるだろ」

綺麗な声が教室に響く。

え?

「俺達の思い出に、律は生きてる」

………紫色。

「俺達が律を忘れたら、それこそ律はほんとに死んだことになるんだ」

「だから、律のこと…忘れないでくれ」

そう頭を下げる紫色。


ねぇ、紫色の言葉は魔法みたいだね。

私も紫色の横に並んで、頭を下げた。



「律のこと、覚えててほしい!」

「太陽みたいな律のこと、頭の隅に…覚えといて……っ」

私が涙を流すと紫色は

「雨……」

私の名を呼んで、優しく涙を拭う。



「当たり前だろ!!」

「ってか律のこと忘れられるわけねぇよ!」

みんな声を上げて泣き笑う。


あぁ、このクラスでよかった。

そう、思ったんだ。

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