雨上がりの陽だまりで。~誰よりも優しい君に~


悪夢だと、信じたい。


「ねぇ、紫色…」

さっきのは、夢なんでしょう?



「…律は……?」

情けないほど、震えていた。



「覚えて、ねぇの?」

紫色は目を見開いて悲しそうに顔を歪める。


「…………しぃ……っ」

溢れた涙で濡れた私の顔を、紫色は優しく両手で包んで頭をコツンと合わせた。



「うん、雨……泣けよ…」


自分だって、泣きたいくせに。

いつか律が言ってた。


『紫色は絶対に涙を人には見せねぇ』って

『涙を見せる時は、本気で限界な時だ』って

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