東京恋愛専科～または恋は言ってみりゃボディブロー～
演目が終わり、落語家は一礼をすると舞台から立ち去った。

「どうだった？」

拍手をしながら村坂さんが小さな声で聞いてきた。

「おもしろいなと思いました」

私がそう返事をすると、
「君はどこがおもしろいと思ったんだい？」

村坂さんが聞き返してきた。

「どこが、ですか…」

先ほどやっていた演目のおもしろかったところを思い出そうとしたら、出囃子が鳴り出して今度は別人の落語家が舞台に現れた。

「おっ、怪談の名手の登場だ」

その落語家の顔を見た村坂さんが言った。

「怪談の名手ですか？」

どう言う意味なのかと思いながら聞き返したら、
「あの落語家はね、怪談話をやらせたら右に出る者はいないと言われるほどの実力者なんだ。

今回の演目は、そんな彼の十八番と言っても過言ではない『お菊の皿』だね」

村坂さんが答えた。
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