東京恋愛専科~または恋は言ってみりゃボディブロー~
「どうも」

副社長がグラスに口をつけようとしたら、シャツの胸ポケットからスマートフォンを取り出した。

「ちょっと電話が…」

副社長はそう言った後、店の奥へと姿を消して行った。

それと同時に、
「いらっしゃいませ」

ドアの開いた音がしたので視線を向けると、
「ああ、これはすまなかったね」

村坂さんが入ってきた。

た、助かった~…。

全てのタイミングがよかったことに、ホッと胸をなで下ろした。

本当にどうしようかと思ってた…。

「マスター、ジン・トニックを」

「はい、かしこまりました」

村坂さんは私の隣に腰を下ろすと、バーテンダーに注文をした。

「道に迷わずにくることができたかい?

お互いの会社から離れている店と言えば、ここしか思い浮かばなかったんだ」

そう言った村坂さんに、
「スマートフォンのマップアプリを頼りにきたので迷いませんでした」

私は返事をした。
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