東京恋愛専科~または恋は言ってみりゃボディブロー~
「私もビックリしました。

今朝社長室に呼ばれて、そのことを知ったんです」

私は言った。

「正直なことを言うと、君が『カシオペア』の社員だったことに驚いたよ。

そのせいで、僕は『カシオペア』に雇われた産業スパイじゃないかって社長に疑われたから。

特に僕が勤めている『小野製作所』は、去年…いや、2年前だったかな?

専務とその秘書が産業スパイを働いて逮捕されたって言う事件があったから、産業スパイに関しては特に厳しくて」

「…ああ、何かで聞いたことあります。

アメリカの企業に情報を送ったとかって」

「もちろん、ちゃんと事情を説明して無実を証明したよ。

最近仲良くなった友人と一緒に落語を見に行って蕎麦屋で食事をしただけだって」

「私も同じ説明をして無実だと言いました。

それに、村坂さんが『小野製作所』の社員だったことを知らなかったのは本当ですし…」

私が呟くように言ったら、
「君には本当に迷惑をかけてしまったな」

村坂さんが申し訳なさそうに言った。
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