東京恋愛専科~または恋は言ってみりゃボディブロー~
バターの甘い香りに、それまで悲しかった気持ちが落ち着いて行くのが自分でもわかった。

口に入れると、パリパリとした生地の食感とバターの甘い香りが鼻を抜けた。

「美味しいです」

そう言った私に、
「よかった、落ち着いた…」

社長はホッとしたと言うように胸をなで下ろした。

「それと、社長」

木田さんは思い出したと言うように、社長にコソッと耳打ちをした。

社長は驚いた顔で木田さんを見つめた。

「それは、本当か?」

そう聞いた社長に、
「はい」

木田さんは首を縦に振ってうなずいた。

何の話をしているのだろう?

「わかった。

木田、もう下がっていいぞ」

社長に言われて、
「はい、失礼します」

木田さんは頭を下げると、社長室から立ち去った。
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