東京恋愛専科～または恋は言ってみりゃボディブロー～
木田さんがいなくなると、
「つづりちゃん、息子を――光明のことをちゃんと信じてあげてね」

社長が言った。

「なんて、当の本人は今日は取引先の会社に行っているからここにはいないんだけどね」

そう言って社長はエヘヘと笑った。

「そうなんですか」

私は呟くように返事をした。

「あの子は不器用と言うか、ちょっと言葉が足りないところが昔からあってね。

母親を亡くして、兄弟姉妹もいなくて、僕も仕事で忙しかったから、光明と一緒にいるなんて言うことはなかったんだ」

社長は言った。

「運動会とか授業参観の学校行事に参加できなかったし、一緒に食事をするなんて言うこともなかった。

それ故に、光明にはずいぶんと寂しい思いをさせたなって今でも申し訳なく思ってるよ」

そのことを思い出したのか、社長は寂しそうな顔をした。
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