東京恋愛専科～または恋は言ってみりゃボディブロー～

　＊　＊　＊

俺が桜井つづりさんと出会うきっかけとなったのは、父親で『カシオペア』の社長・樫尾敏明（ｶｼｵﾄｼｱｷ）だった。

マナカの残高不足で困っていたところを彼女は自分のマナカを貸してくれたのだと、父はそう言っていた。

彼女が父と出会っていたその時、俺は海外出張で１週間ほど日本を留守にしていた。

「光明、素敵な女の子を見つけたんだ！」

宿泊先のホテルの部屋で、父は嬉しそうに言った。

「えっ…お父さん、再婚するの？」

あまりにも嬉しそうな彼の様子に驚いて、俺は聞き返した。

亡き妻を今でも愛して、周りからどれだけ再婚の話を勧めても耳を貸そうとしなかった父がついに結婚をするのか…。

そんなことを感慨深く思っていた矢先、
「いや、結婚するのはお前の方だよ。

光明にピッタリの優しくて素敵な女の子と出会ったんだよ！」

父が答えた。