東京恋愛専科～または恋は言ってみりゃボディブロー～

ああ、俺か…って、ええっ！？

「いや、け、結婚って…！？」

確かに俺はもう３５歳だ。

周りからは結婚の話を勧められているのは事実だが、正直なことを言うとあまり乗り気ではなかった。

若い頃の父が裸一貫で会社を立ちあげ、今や日本を代表する大手企業と言われている『カシオペア』を支えて、いずれは会社を継ぎたいからだ。

伴侶を持って家庭を築くことも大切なのは、もちろんわかっている。

でも今の俺は結婚を考えることはもちろんのこと、誰かと交際をしようと言う気もなかった。

「名前は桜井つづりさんで、年齢は２４歳。

営業２課で派遣社員として働いているそうだよ」

驚いている俺に気づいていないと言うように、父は彼女についての説明を始めた。

おそらく、これは全て父の秘書である木田さんからの情報だな。

そんなことを思っていたら、
「さっき、お前のパソコンに彼女の写真を送ったから」

父が言った。