東京恋愛専科~または恋は言ってみりゃボディブロー~
「おつきあいしたいと思った?」

そう聞いてきた父に、俺はネクタイをゆるめようとした手を止めた。

「えっ…」

おつきあい…ああ、そうだった。

父はそれを前提として俺とつづりさんを会わせたんだった。

だけども、
「…それはちょっとわからないかな」

父には悪いけど、俺はそう返事をした。

「あー…」

ガッカリとうなだれるように声をあげた父に、
「でも…彼女のことをもっと知りたいと思った」

続けて俺は言った。

「へえ、そう」

俺の返事に父はニヤニヤと笑うと、
「それじゃあ、おやすみ」

手を振りながら部屋から出て行った。

「おやすみ」

そんな父の様子を見ながら俺は返事をした。

…あのニヤニヤとした笑い方は何なんだ?
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