東京恋愛専科~または恋は言ってみりゃボディブロー~
差し出されたその手を重ねたその瞬間、私は彼と一緒に神戸に行くことになる。

それはつまり、もう2度と副社長に会えないと言う意味だ。

副社長に何も伝えないまま、このまま神戸に行くの?

“好き”だって思いを伝えていないのに、副社長から気持ちを聞いていないのに、私は村坂さんと一緒に神戸に行くの?

もしかしたら一生会うことはおろか、顔を見ることもできない。

…そんなのは、嫌だ。

立ち飲み居酒屋で副社長と一緒に飲んで、お互いのことを語りあったあの日。

会社近くのパン屋で待ちあわせをして、一緒に水族館へ行こうと誘われたあの日。

イルカショーではしゃいでびしょ濡れになって、だけども一緒に笑って、キスを交わしたあの日。
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