東京恋愛専科~または恋は言ってみりゃボディブロー~
彼が豚まんを買いに行っている間、メリケンパークへの道を調べようと思ってカバンからスマートフォンを取り出した。

その時だった。

「1人?」

「えっ?」

話しかけてきたのはアップバングの黒髪の男だった。

黒いシャツにブラックジーンズ、足元は黒い靴と全部黒づくめである。

「いや、1人ではないですけど…」

私がそう返事をしたら、
「友達を待っているんだ」

彼はそう言った。

「友達、ではないんですけど…」

「つづりさん、お待たせしました」

言葉を続けようとした私をさえぎるように、豚まんを片手に光明さんが間に割って入ってきた。

「この人、誰ですか?」

彼の姿に気づいた光明さんが私に聞いてきた。

「えっと…」

「何だ、男か」

彼はやれやれと言うように息を吐くと、私たちの前から立ち去った。
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