東京恋愛専科~または恋は言ってみりゃボディブロー~
時計が夕方近くを差した頃、私たちはコインロッカーから荷物を受け取ると宿泊先のホテルへと足を向かわせた。

「いらっしゃいませ」

ホテルに足を踏み入れると、ベルボーイが声をかけてきた。

受付でチェックインをする光明さんの横に並ぶように、私もつきあうことにした。

「樫尾でツインの予約をしているのですが」

そう言った光明さんに、
「樫尾様ですね」

従業員は隣にあるパソコンで確認をした。

その従業員の名札には“細貝”と書いてあった。

同時に、その名前に私は見覚えがあった。

まさかと、私は自分の目を疑った。

でも“山田”や“鈴木”みたいによく見かける名字と言う訳ではない。

「樫尾様でツインの予約ですね。

部屋番号は632号室になります」

2つのルームキーを渡してきた従業員のその顔に、私は視線を向けた。
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